餃子好き同士の誘い文句で「餃子を囲もう!」というものがあるのだが、この言葉が本当に好きだ。
なんというかその言葉だけで、テーブルの中心にデカい皿が置かれ、そこに円盤状に餃子が並んでいる様子が目に浮かぶ。いただきますの言葉とともに、それぞれが箸を伸ばし円を崩す。どこから攻めるか考えたり、狙っていた餃子が他の人と被ったり。それがくだらなくも楽しくて、そんなことを考えていると気分はすっかり餃子だ。
ところで、「餃子を囲む」って、オンラインではできないのだろうか。
もちろん一つのお皿をみんなで共有し、円盤を崩すという共同作業はオフラインでしかできない。しかし、友達と家で作る家餃子ならどうだろう。みんなでわいわい言いながら餃子を作る時間や、焼き上がった餃子がテーブルに運ばれてきた瞬間は、オンラインでも再現できるのではないだろうか。
そんな思いから、連休中の昼に友人を誘って、オンライン餃子会を開催してみた。参加メンバーは、筆者が運営するサイト「本日の餃子情報です※」のメンバー+よく餃子を食べに行く餃子友達だ。(※表示はスマホからのみ)
「オンライン餃子会」のスタートは、餃子を包むところから
お肉をこねたり、野菜を刻んだりしながらでは会話しにくいため、餃子のタネを作る段階までは事前に終わらせておく。ちなみに筆者はキャベツでも白菜でもなく、白菜の浅漬けを入れます。
タネ、皮、包んだ餃子を並べるお皿を用意したら、オンライン餃子会スタートだ。
▲今回は、5人に参加してもらった。上段真ん中が筆者
餃子を包む時間は、あまり頭を使っていないのにも関わらず、一人のときは黙々と作業してしまいがち。だからこそ、何か別のことをしながら調理するにはもってこいでもある。友達との「家餃子」だって、みんなで雑談しながら餃子を包む時間が実は一番楽しいのだ。
実際にやってみると、楽しいだけではなく、沈黙を気にする煩わしさがないことが分かった。メインは餃子を包むという行為なので、常に会話に参加しなくてはいけないというプレッシャーはない。「ちょっといま餃子に集中してるんで」というスタンスが許されるのだ。
▲一人じゃない。画面を通じてみんなで餃子を包んでいる
また、オンライン飲み会特有の現象として、常に全員がこっちを向いている落ち着かなさがあると思うが、今回は各々が餃子を包んでいるので、同時に画面を見ている状況にもあまりならない。手元に集中しながら、耳の片隅でみんなの会話を聞いていればいいのだ。
▲突発的に餃子自慢を始めても良い
唐突に始まった包み方講座
そして、みんなで同じ作業をやっているからこその共通の話題があるのも大きい。「みんな自粛期間に何してるの?」なんて会話を続けていても良いのだけど、ここはやはり餃子の話題で盛り上がるのが一興。
家餃子は具材から焼き方、食べ方など、細かい流儀や流派があるため、みんなのこだわりを聞く時間も楽しい。
▲「これさ、もち粉入りの皮やねんけど」(左下)
皮はどんなものを使っているかという話題には、なんと5組中4組がもち粉入りだった(一般的に、餃子好きはもれなくもち粉入りの皮を使っている印象)。できあがりの食感も良いけれど、筆者は「シンプルに包みやすい」という理由でもち粉入りの皮が好きだ。
今回は急な招集だったため該当者はいなかったが、時間があるなら皮も手作りした方が美味しいはず。
ところで、みんなで皮を包んでいると気になるのが、餃子の包み方。メンバーのうち一人が独特な包み方をしていたため、みんなの注目が彼(右下)に向いた。
▲「え、なんかそれ特別な包み方じゃない?」(左下)
これ、よく見ると餃子のひだの向きが途中から反転しているのだ。
▲「この前、餃子のイラストを描いていたときに『餃子ってこんな形じゃないなあ』って思って。逆にイラストに寄せてみた」
確かにイラストで見る餃子っぽい。みんなで試してみようということで、唐突に始まる包み方講座。
▲カメラを抱きかかえるようにしながら、餃子を包む
全員が普段見られないアングルから餃子の包み方を見ることができるのも、オンライン餃子会ならではの発見だ。一人称視点で包むところを見られるので、みんなで真似して包みやすい。
▲他のメンバー(左下)もやってみた。画像では伝わりにくいが、めちゃくちゃ包むのが速く、ひだも細かいので、プロかと思った。誰も真似できなかった
そうこうしているうちに全員が包み終わったので、各自焼きの工程に入ることに。
餃子は焼き上がりが一番盛り上がる
餃子を焼く工程でも、さまざまな流派がある。焼いてから蒸すのか、蒸してから焼くのか。水を入れるのかお湯を入れるのか。はたまたどんなフライパンを使うのか、ごま油を使うのか米油を使うのか、などなど。
しかし、どれが正解でどれが間違いということもないし、誰でも比較的簡単に焼くことができるのが餃子の良いところだと思う。
ちなみに、筆者は以前別媒体で「一般社団法人焼き餃子協会」の小野寺 力さんに取材した際に教えてもらった焼き方をずっと続けている。誰でも失敗せずに、皮もちもちで焼き目パリパリ、餡がジューシーな餃子を焼けるので、気になる方はぜひ読んでみてほしい。
▲焼きの工程中は画面の前にいない人も多い
先ほど、餃子を包みながらみんなで雑談する時間が一番楽しいという話をしたが、自分で餃子を焼く場合、一番テンションが上がるのは、焼きあがった餃子をお皿にひっくり返した瞬間だ。お店で食べる場合は餃子がテーブルに運ばれてきた瞬間。
人類はきっと、餃子が姿を見せた瞬間に一番ときめくようにできている。
▲自分の餃子の焼き上がりに、思わずテンションが高くなり画面上でアピールするも
▲他のメンバーの餃子がめちゃくちゃ美味しそうで、内心恥ずかしくなっている筆者の図
今回のオンライン餃子会は、焼き上がりの餃子がテーブルに運ばれてきた瞬間をなんとか再現できないかと思い、企画した。案外イケるんじゃないかなという読み通り、テンションは上がったし、焼きあがった餃子が並んだ画面はなかなかの迫力。
▲「美味そう~~!」 (全員)
あとはもう食べるだけ
▲「いただきます!」 (全員)
みんなで囲んで食べるときは一瞬でなくなってしまう餃子も、オンラインでなら全部自分で食べられるのが嬉しい。というか、確かにみんなで餃子を囲んでいる感覚はあるのに、それぞれちがう餃子を食べているという事実が不思議だ。
▲写真を撮る前に少し食べてしまった
一口目を食べたとき、全員もれなく笑顔になってしまう餃子の力。ご飯と一緒に食べるのも良し。酒をグビグビ飲みながら餃子を齧るも良し。気兼ねなく各々の好きなように食べられるのがオンライン餃子会だ。
▲「あ~米ウマっ!!」白ご飯という秘密兵器を持ち出してきたメンバーの笑顔が眩しい(左上)
ところで餃子好きの間では、つけダレ論争なんてものもあるが、筆者は餃子にタレをつけない。ある時、お店ごとに異なるはずの餃子そのものの味を感じようとして、餃子をつけダレなしで食べ始めたのをきっかけに、以降基本的にすべての餃子をそのまま食べるようになってしまった。
この食べ方を勝手に「餃子を裸で食べる」と呼んでいる。ちなみに、今回餃子を裸で食べるメンバーは6人中2人だった。同率1位タイの食べ方は酢コショウ。裸と酢コショウが競るのはたぶん珍しい状況。
▲「裸餃子」「餃子裸族」などという言葉も勝手に使ってる。家餃子の場合は、裸餃子で食べる前提で味付けは濃いめ
結局、オンラインでみんなと食卓を繋げたら、一人でも餃子は一瞬でなくなってしまった。
最後に、みんなの個人的な「家餃子TIPS」と、オンライン餃子会の感想を聞いてみたので、以下にまとめる。
家餃子TIPS
(餃子作り編)
- 家餃子だからこそ、にんにくを気にせずぶち込める
- 餃子の味で一番大事なのは、お肉をこねたあとに寝かせること。具材の味はどれだけ調味料を入れたかではなく、お肉を「どれだけこねたか」「どれだけ寝かせたか」で決まる
- 具材に味をしっかり染みこませれば、タレにこだわる必要がない
- 長ネギじゃなくて玉ねぎを入れると、餃子に甘みが出る
- 一般的に、右利きの人は左から皮を包んでいくはずだけど、合わせて餃子のタネを少し左寄せにしておくと、皮を閉じるときにタネがはみ出しにくい
- 餃子を焼くときは、米油の方がパリッと仕上がるしヘルシー
(余った餃子の保存・活用編)
- 餃子のタネだけ余った場合は、卵とご飯と一緒に炒めればチャーハンになる
- 餃子を冷凍するときは、熱伝導率が高いアルミのバットを使うと、急速冷凍できる(バットにはラップを敷く)
- 餃子を冷凍するときの一番の失敗は、隣り合った餃子の皮がくっついてしまうこと。必ず間隔を空けて並べるように
- 完全に凍ったあとは、皮同士がくっつかなくなる。バットから取り出してジッパー付きの保存袋などに移して冷凍すると、その後も取り出しやすい
オンライン餃子会の感想
- 「昼開催は最高ってことが分かった」
- 「一人で包むとめっちゃ暇だけど、その時間を喋りながらつぶせるのは良いなと思った。みんなで包むから楽しい」
- 「みんなで餃子を囲むのも楽しいけど、各々の餃子が見られるのも面白かった」
- 「みんなで作り方をシェアできるのが良かった。特に包み方はみんな同じアングルで見られるので楽しい」
- 「台所だけに拘束されず、リビングで作業できるのが餃子の良さだなと思った」
- 「餃子を焼くときには工夫が必要かも。せっかくなら焼いているところも撮れたらもっと楽しそう」
工夫の余地はまだまだありそうなものの、「餃子を囲む」あの感じを再現でき、大満足で終わったオンライン餃子会。
今回は餃子を作り慣れているメンバーが多かったが、餃子作りに求められる自炊スキルは低い。作ったことがないメンバーに教えながら、みんなで作るというのも楽しいのではないかと思う。
それに家餃子なら、作らなくてもお取り寄せという手段だってある。東京の名店だけでなく、全国各地のお取り寄せ餃子をみんなで取り寄せるのも楽しそうだ。
新しい家餃子の楽しみ方として、オンライン餃子会をぜひ試してみてください。
▲ごちそうさまでした
書いた人:早川大輝
フリーランスの編集・ライター。日常的にメモを残すのが癖で、淡々と何かを記録することが好き。起きている時間は、テレビドラマを観ているか、餃子のことを考えていることが多い。友人二人とともに、餃子のサイトを運営しています。
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June 05, 2020 at 04:30AM
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