日本三大地鶏の一つである「比内地鶏」を擁する秋田県。県内の生産者や流通業者らが一丸となって2017年以降、落ち込んでいた生産量を連続で伸ばしてきたが、今年は様相が異なっている。
食鳥処理から加工、販売までを担い、年間約14万羽を扱うJA秋田たかのすによると、4月以降、荷動きが急激に悪化し、同月の販売量は前年比8、9割減にまで落ち込んでいるという。
長年の地道な営業活動により、9割を首都圏を中心とした県外の飲食店や高級スーパーなどに販売していたが、新型コロナによる影響が直撃した。「販売環境は厳しいが、加工を止めるわけにはいかない。需要期の秋冬までに終息するのを願うしかない」(同JA加工部)と話す。
比内地鶏の販売低迷を受けて、秋田県も消費拡大対策を盛り込んだ補正予算を編成するなど支援に乗り出した。学校給食や高齢者施設での利用などを後押しする方針だ。
奈良県のブランド地鶏「大和肉鶏」も苦戦している。大和肉鶏農業協同組合によると、3月下旬から販売が大きく落ち込み、4月の販売量は前年を6、7割下回る見通し。同組合は「販売先の中心であるホテルや飲食店向けが大幅に落ち込んだ。緊急事態宣言の解除の見通しが立たない中、当面厳しい」と話す。
こうした中、ひなの導入数を抑え、生産調整する選択肢もある。ただ、飼育日数が平均135日の「大和肉鶏」の場合、効果が出るのは早くても4カ月後。「即効性がない上、4カ月後の状況が読みづらく判断が難しい」(同組合)のが実状だ。
現在は、取引先の卸業者が、余剰分を冷凍保存して対応している。同組合から「大和肉鶏」を仕入れて販売するフード三愛(同県桜井市)は「何とか廃棄だけは出さないように対応したい。ただ現状でも冷凍庫の7割が埋まっており、このままだと、残り3週間で満杯になる」と危機感を示す。
苦肉の策を講じる動きもある。滋賀県のブランド地鶏「近江しゃも」の生産・販売を手掛ける「かしわの川中」は4月上旬から、余剰となった鶏肉を3割引きで販売し始めた。
同社では、月に約500羽の「近江しゃも」を処理するが、感染拡大で需要が激減し、現在は約半数の売り先がない状態という。川中高平代表は「採算は取れず、苦渋の決断。だが、命を頂いた以上、むざむざ廃棄することだけは避けたい」と強調する。
家庭消費へネット発信
外食での需要回復が見通せない中、各産地では、家庭消費向けの販促を強めている。日本食鳥協会のホームページでは、「地鶏情報プラットホーム」として、各産地の地鶏に関する情報を集約。宮崎県のみやざき地頭鶏事業協同組合は「居酒屋メニューのイメージが強いが、フライパンなどを使い、家庭でも簡単に調理できる」として家庭での消費を勧める。
同協会の佐藤実会長は「緊急事態宣言の発令以降、高級食材を扱う飲食店が休業し、地鶏の消費が減少している。落ち込んだ需要回復に努めていきたい」と力を込める。
<ことば> 地鶏
在来種由来の血液を50%以上持つ国産鶏。地鶏肉の日本農林規格(JAS)では、75日齢以上飼育していることや、28日齢から平飼いで飼育していることなどを定義とする。日本食鳥協会によると、全国で50種類以上が存在。各地の特産品として地域振興にも貢献する一方、生産者の高齢化や飼育の手間などが課題となり、ブロイラーに比べ飼養羽数は少ないのが現状だ。
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May 08, 2020 at 05:01AM
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[新型コロナ] ブランド地鶏 販売量激減 外食需要いつ回復 「あと3週間で満杯」 加工止められない - 日本農業新聞
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