期待しすぎたところも、たしかにあったのかも。
ヤマハから、ノイズキャンセリング機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホン「TW-E7A」が登場しました。ヤマハの完全ワイヤレスイヤホンの最上位モデルであり、昨年から僕が発売を楽しみにしていたイヤホンでもあります。
が、結論から言いましょう。まことに、まこーとに、残念な結果になりました。
音はとても良いのです。良いのですが、それ以外の部分がもっと良くできたと思うのです。イヤホンは音楽を聞くための装置なんだから、何より音質が重要。しかし、こと完全ワイヤレスにおいてはそれだけじゃあ満足できないんですよね。
というわけで今回は、改めて完全ワイヤレスイヤホンとの向き合い方という目線を持ちつつ「TW-E7A」をレビューしてみようと思います。
ヤマハ TW-E7A
これは何?:ヤマハの完全ワイヤレスイヤホン最上位モデル
いくら?:市場想定価格2万4000円
好きなところ:ヤマハのシグネチャーサウンド、リスニングケア機能
好きじゃないところ:音質以外の要素が及第点未満
芳醇なヤマハサウンドはとっても心地良い
まず音質、ここは文句無しに良い音でした。高域から低域までフラットに鳴りつつも、音の粒が非常に繊細でサウンドの輪郭が感じられます。どのジャンルを聞いても優等生ですが、特に女性ボーカルの息遣いにゾクっと来ますね。王道のパラパラ系チャーハンです。
また、大音量で音楽を聞き続けると聴覚に支障をきたすという観点から、ヤマハの完全ワイヤレスには独自の「リスニングケア」機能が搭載されています。高音や低音のバランスを音量にあわせて自動調整するというもので、ヤマハのAVアンプ「YPAOボリューム」をベースにした技術。
実際に「リスニングケア」をオンにすると、同じ音量でも少しだけ迫力が増して聞こえます。中低域がモリっと持ち上がった感じですね。聞いている音楽のジャンルにもよりますが、基本的にはオンにしっぱなしで良いでしょう。
ノイズキャンセリングの威力はそこまで強くなく、「AirPods Pro」を100とするなら、25くらい。音質を犠牲にしないためにあえてノイキャンの威力を落としたというゼンハイザーの「Momentum True Wireless 2」を、やや下回るくらいですね。もともとの遮音性がわりと優秀なので、変化量に気づきにくいというのもあるかも。これも常時オンで良いかと。
さて、音質に関してはフラッグシップモデルらしい堂々としたものでした。でも、「コレは良い完全ワイヤレスイヤホンだよ!」と叫べない理由がいくつかあるんです。
接続の不安定さは、2020年のイヤホンらしくない
2年ほど前の完全ワイヤレスは、再生中に音が途切れてしまうかどうかが、優秀な機種とそうでない機種の大きな違いでした。良い完全ワイヤレスは、音が途切れない。言い換えるなら、完全ワイヤレスは「途切れてしまうのをどれくらい許すか」という判断のもと使っていた時期があったのです。
ここ数年のあいだで完全ワイヤレス接続の安定性は大きく進化し、今ではアンダー1万円のイヤホンでも途切れないものが珍しくありません。となれば、2万円を超えるようなハイエンド機種は「途切れないで当然でしょ」と、そんな目で見ちゃいますよね? よね!?
「TW-E7A」は、接続がかなり不安定でした。地下鉄や渋谷駅のようなハードな通信環境では1分の間で何度も途切れ、そこまで通信環境が厳しくない喫茶店などでもたまに途切れます。何度か連続で途切れた後は、片方のイヤホンからしか音が出なくなることも。もちろん、途切れないこともあるのですが。
正直、2020年の後半に発売する2万円オーバーのワイヤレスイヤホンで、これはちょっと…。もしかしたら僕の使ったイヤホンの個体差かもしれませんが、むしろそうであることを願いたい。接続の安定性は、完全ワイヤレスにおいてはある意味で音質よりも重要ですから。
ケースに一発でおさまらない
完全ワイヤレスは毎日使う、いわば生活に馴染む必要があるガジェットです。毎日使うのなら、それこそケースの開け閉めひとつとってもストレスになってほしくないでしょ? パチッと閉まるあの心地良さや、イヤホンの収まりの良さ、マグネットの吸着感なんかも、使っていて気持ち良いデザインの一つです。
ところが、「TW-E7A」はイヤホンの収納感がイマイチなのです。イヤホンを耳からはずしてケースに収納すると、ケースのフタが締まりきらないことが頻繁に起こります。
これは、イヤホンの横っ腹が収納部分のへりに干渉しちゃって、イヤホンが奥まで収納されきっていないから。イヤホンを奥にグリと押し込むか、ひねるように収納すると解消しますが、例えば歩きながらイヤホンを外してサっと収納する時にジャストで収まらないのって、ちょーっとストレスフル。イヤホンのカバー(3種類が付属、耳に合わせて変えられる)を外すといくらかマシになりますが、完全には解消しません。
ケースに収納した際の電源の挙動が不安定
そしてそして、個人的にもっともいただけない要素が、自動電源オン・オフ機能の仕様。最近の完全ワイヤレスはケースから出すだけでイヤホンの電源がオンになり、耳に装着した頃にはペアリングが完了しているものが主流ですよね。その機能がちょっとややこしいことになってまして。
まず、ケースから取り出す&収納時の自動電源オン・オフ機能自体は、搭載されています。が、状況によってはそれが動作しないという仕様です。ケースのバッテリーが不足している時や、後述のオートパワーオフ機能が絡むと効かないケースがあるのだとか(そういう仕様なのです)。
少なくとも僕が使っていた期間では、自動電源オン・オフが動作したことは一度もありませんでした。上の段落でも話したケースへのしまいづらさも相まって、収納時の挙動は何かと心配になってきますねぇ…。
なので、イヤホンを外す際はボタン長押しで電源オフにしてから収納するのがもっともベター。これを忘れると収納してもイヤホンから音が出ることになり「あれ、スマホから音がでないぞ?」とスマホゲーを起動して焦ることになります。特に家の中で起こりがち。
あと、アプリもできることが少なくて寂しいですね。ノイキャン、外音取り込みモード、リスニングケア、それから自動で電源がきれるオートパワーオフ時間(5分・30分・1時間・3時間)の設定が可能ですが、EQでもあればなーと思います。EQをいじりすぎるとせっかくのリスニングケアが崩れちゃう可能性もあるのかな。
次の最上位モデルに期待
思えば数年前の完全ワイヤレスイヤホンは「テック好きが買う趣味品」でしたけど、最近では価格帯・機能・音質もこなれてきて、誰もが買えるカジュアルなガジェットになってましたよね。
完全ワイヤレスにそれほど明るくない人には、今回の記事の指摘は神経質に思える要素かもしれません。でも、ケーブルがある時は気にしなかったであろう接続の安定感やケースの大きさなど、完全ワイヤレスになって始めて気にしなければいけない要素も多くあるのです。
そうした、ある意味ではイヤホンの本文から外れた部分が安定して初めて、音質を楽しめるのが完全ワイヤレスだと思うのです。
価格は、市場想定価格2万4000円。この価格帯でノイキャン搭載のモデルといえば、ソニー「WF-1000XM3」「WF-SP800N」、オーディオテクニカ「ATH-ANC300TW」、パナソニック「RZ-S50W」、サムスン「Galaxy Buds Live」あたりでしょうか。音質を好みで選ぶとするなら、あとは機能性や使い心地になってくるわけで、そうなると「TW-E7A」の使い心地がいっそう気になってしまいます。自動電源オン・オフが安定するだけでもかなり使いやすさは改善されると思うのですが...。
好意的かつ極論的に解釈するなら、このレビューで挙げた要素を気にしない人にとって「TW-E7A」は、ヤマハサウンドを持ち歩けるポケットサイズの相棒となり得るでしょう。通信環境は場所によるし、電源周りもケースへの収納も慣れが解決するかもしれない。
ですが、僕にとって「TW-E7A」はご縁がない機種だったようです。ヤマハが満を持して送り出す完全ワイヤレスのサウンドには期待していましたが、サウンド以外の要素がここまで気になってしまうとは…。3、5、7とくれば残る奇数は2つ。9あたりで挽回したモデルを、切に望みます。
Source:
からの記事と詳細
https://ift.tt/31daC55
科学&テクノロジー
Bagikan Berita Ini
0 Response to "ヤマハの完全ワイヤレス「TW-E7A」。音質サイコー、だけじゃ満足できないんです...! - ギズモード・ジャパン"
Post a Comment