半世紀前、イスラエル・テルアビブのロッド空港(現ベングリオン空港)で日本人の若者3人が銃を乱射し、約100人を殺傷した。実行犯3人のうち2人はその場で自爆死し、ただ一人の生存者が岡本公三容疑者(74)=警視庁が国際手配中=だ。イスラエルで服役中に捕虜交換で釈放され、その後40年近くにわたりレバノンで生活している。いま、どのような状況なのか。現地を訪ねた。
私が待ち合わせに指定されたのは、レバノンの首都ベイルートから車で南に1時間ほど走った地中海沿いの街だった。多様な人種や宗教が混在し、「モザイク国家」といわれるレバノンで、この街はイスラム教徒が大半を占めているという。
海沿いの目抜き通りに車を止め、現地助手と約束の時間がくるのを待った。
春の日差しが心地よかったが、目の前のオープンテラスのカフェには客は誰もいない。イスラム教のラマダン(断食月)の真っただ中だからだ。
約30分後、黒い革ジャケット姿の中年女性が現れた。かけていたサングラスを外し、少しまぶしそうに私たちを見据えた。すぐに「彼女だ」と察した。
パレスチナ解放人民戦線(PFLP)に属するパレスチナ人女性活動家だ。レバノン政府が岡本容疑者の政治亡命を認めた2000年以来、支援や保護を続けているのが主にPFLPで、彼女は対外的な窓口だということだった。
あいさつを交わした後、彼女は波打ち際の木の柵の前に移動を求めてきたので従った。波が騒がしい。周囲に会話を聞かれるのを警戒しているようだ。
彼女が切り出す。
「原則としてコーゾーへのインタビューはできません。それが彼がレバノンに政治亡命したとき、レバノン政府とPFLPが交わした約束です」
そう、彼女は言った。
しかし、岡本容疑者は2000年から17年までの間に日本のテレビや新聞社、通信社の取材を少なくとも4回受け、報道番組や新聞などのインタビュー記事になっていた。
これはどういうことか。
「インタビューではなく、た…
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