トランプ前大統領の「口止め料」裁判、元顧問弁護士が証言 「指示され支払った」
ドナルド・トランプ前米大統領が「不倫口止め料」の支払いをめぐって業務記録に虚偽記載をした罪に問われている裁判で、検察側の最重要証人のマイケル・コーエン氏が13日、ニューヨーク州地裁に出廷し、支払いは前大統領の指示だったと繰り返し証言した。
コーエン氏はトランプ前大統領の顧問弁護士だった。前大統領の不倫相手だったとされる元ポルノ映画スターのストーミー・ダニエルズ氏への金銭の支払いをめぐり、2018年に税法違反や詐欺、選挙資金法違反など八つの重罪について有罪を認めた。また、議会での偽証罪についても有罪を認めた。
同年12月に裁判で禁錮3年の実刑判決を受け、服役した。
この日の裁判でコーエン氏は、ダニエルズ氏に口止め料13万ドル(約2000万円)を送金した直後、前大統領と話をしたと証言。当時の支払いは、前大統領の「指示を受けて(前大統領の)利益のために」行った多くの活動の一つだったと述べた。
前大統領はこの裁判で、コーエン氏への口止め料の払い戻しを弁護士費用に見せかけて行った罪など、計34件の業務記録の虚偽記載の罪に問われている。前大統領は無罪を主張し、ダニエルズ氏との性的関係についても否定している。
検察は、問題の支払いが2016年大統領選の選挙運動の最終盤で行われており、支払いを隠すための虚偽記載は選挙不正に当たるとしている。
前大統領が支払い計画を「承認」
コーエン氏はこの日の法廷で、椅子に座って目を閉じて聴き入るトランプ前大統領を前に証言した。
コーエン氏は、大統領選から就任式までの間に、前大統領とその一族企業「トランプ・オーガナイゼーション」のアレン・ワイセルバーグ最高財務責任者(CFO)に会ったと説明。同CFOから、3万5000ドルずつ12回に分けてコーエン氏に払い戻しがあり、弁護士費用として処理されるとの説明があったと述べた。この取り決めについては、前大統領と同CFOが事前に話し合って決めていたとの印象を受けたと証言した。
そして、前大統領がこの計画を「承認した」うえで、「これはDC(首都ワシントン)でものすごいことになるぞ」とコーエン氏に言ったと述べた。
払い戻しの総額はコーエン氏が支払った金額よりはるかに大きくなるが、これは税金がかかるためだったと、同氏は説明した。
この裁判が始まって以来、コーエン氏の名前は検察の主張の中で繰り返し言及されてきた。そして、裁判開始から16日目のこの日、ついに本人が証人席に座った。
コーエン氏は、前大統領が払い戻しの計画について知っていたとの検察の主張を立証するのに役立つ、数少ない証人の1人だ。検察は前大統領が詐欺を働いたとしているが、なぜ詐欺を働いたかについてコーエン氏が証言する可能性もある。
「とにかく対処しろ」
コーエン氏はこの日の法廷で、前大統領が2016年大統領選への立候補を発表した後、否定的な評判に「備える」よう前大統領から言われたとも証言。「多くの女性が訴え出るだろう」と前大統領は言ったとした。
また、前大統領から、いくつかの口止め料の支払いの「処理」と、ネガティブな記事の掲載を阻止するためのタブロイドメディアとの関係構築を指示されたと述べた。
コーエン氏はさらに、ダニエルズ氏が自らの話をメディアに売り込むのを止められなかったとして、前大統領が「本当に怒っていた」と証言した。
そして、ダニエルズ氏の話は大統領選で災いとなる可能性があるとして、前大統領は「とにかく対処しろ」とコーエン氏に言ったと述べた。前大統領は「女性に嫌われてしまう」とコーエン氏に言ったという。
コーエン氏はこのほか、米タブロイド紙「ナショナル・エンクワイアラー」と協力し、前大統領と米誌「プレイボーイ」のモデルだったカレン・マクドゥーガル氏との不倫疑惑に関する記事を買い取り、葬り去ったと証言した。
コーエン氏は、前大統領が「ナショナル・エンクワイアラー」発行人のデイヴィッド・ペッカー氏に電話し、マクドゥーガル氏への支払いについて尋ねた際に、同席していたと説明。「ペッカー氏は『コントロールできている。この件は引き受ける』と言った」と述べた。
この日の裁判の後、トランプ前大統領は法廷の外で記者団に向かい、この裁判は政治的な動機によるもので、今秋の大統領選に向けた運動を邪魔しようとするものだと主張した。
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