アメリカ大統領補佐官、ネタニヤフ首相に提言 戦争をガザの「政治戦略」に結び付けるよう
アメリカのジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は19日、イスラエルを訪れ、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に対して、ガザ地区での戦争を同地区の将来を見据えた「政治的戦略」に結び付けるよう提言した。
サリヴァン補佐官はサウジアラビアを訪れ、ムハンマド皇太子兼首相と中東情勢について協議した後、エルサレムに入った。
ホワイトハウスの声明によると、サリヴァン氏はネタニヤフ首相に対して、「(イスラム組織)ハマスの敗北を確実に恒久的なものとし、人質全員の解放と、ガザにとってより良い未来を確保することのできる政治的戦略に、イスラエルが軍事作戦を結びつけることの必要性」をあらためて強調したという。
サリヴァン補佐官はさらに、サウジアラビアでの協議内容をネタニヤフ首相に伝え、「イスラエルとパレスチナの人たちに提供できるかもしれない可能性」を示したという。
バイデン米政権はかねて、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化や、イスラエルとパレスチナが共存する二国家解決の実現を目指すという約束を含む、和平案の策定に取り組んでいる。
閣内不一致
他方、イスラエル政府内では閣僚の不一致が浮き彫りになっている。戦時内閣に参加するベニー・ガンツ前国防相が18日、記者会見を開き、ガザでの戦闘終結後の統治計画を作成しなければ、政権から離脱する考えを明らかにした。
ガンツ氏は、6項目の「戦略的目標」を実現するための計画をネタニヤフ首相が6月8日までに提示しなければ、辞任すると主張した。6項目の目標には、ハマスのガザ地区統治を終わらせることや、複数の国が参加する文民統治機関の設置などが含まれる。
ネタニヤフ首相はこれに対して、ガンツ氏の要求は「イスラエル敗北」と「パレスチナ国家の樹立」につながると反論した。首相はかねて、パレスチナ国家の建国に反対している。
ネタニヤフ首相はこれまでのところ、「全面勝利」に注力しているとして、戦争終結後の展望は示していない。
しかし、イスラエル政府内では「戦後」についての亀裂が深まっている。ガンツ氏やヨアヴ・ガラント国防相は、イスラエルはガザ地区の軍事支配を続けるべきでないという立場だが、連立してネタニヤフ政権を支える極右勢力はハマス打倒のためにガザを軍事的に掌握し続けることが必要だと主張している。
ガザ全域で戦闘続く
ガザでの戦闘は続き、ガザ地区でハマスが運営する保健省は19日、ガザ地区中部のヌセイラト難民キャンプがイスラエルに空爆され、31人が殺害され、20人が負傷したと明らかにした。
現場を目撃したヤセル・アブ・オウラ氏はAFP通信に対して、住居棟がまるごと「破壊され」、「がれきの下にまだ遺体が埋まっている」と話した。
イスラエル国防軍(IDF)は、現場について報告を確認中だと述べた。
IDFはさらに、ガザ地区最南部のラファを含む複数地区で数十の標的を攻撃し、ガザ北部ジャバリアで激戦を展開したと明らかにした。南部での戦闘ではイスラエル兵2人が死亡したという。
国連によるとラファからは約80万人が避難した。そのほとんどはすでに7カ月におよぶ戦争の中で住む場所を繰り返し失い、避難を余儀なくされている。イスラエルは、ラファがハマスにとって最後の拠点だとして、軍事作戦を開始している。
イスラエル軍は同時に、いったんハマスを掃討したとしていたガザ北部にハマスが戻り再び拠点にしているとして、北部への攻撃も再開している。
アメリカ政府はかねて、民間人保護の計画がないままラファに全面侵攻することがないよう、イスラエルに警告してきた。民間人保護の計画をイスラエルは提示していないと、アメリカは指摘している。
ホワイトハウスはこれまでに、イスラエルがラファに地上部隊を侵攻させるなら、一部の武器提供を停止すると言及している。
イスラエル政府関係者はロイター通信に対し、ネタニヤフ首相と政府幹部はサリヴァン補佐官に対して、ラファ全面侵攻の必要性を説得し、納得してもらうよう働きかけるつもりだと明らかにした。
ハマスが昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲し、約1200人を殺害、252人を人質にしたのを機に、イスラエルはガザ地区への攻撃を開始。ハマス運営の保健省によると、7カ月間で3万5456人以上が殺害されている。
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