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焦点:司法の掌握目論むトランプ氏、側近が描く人事と組織改革の青写真 - ロイター (Reuters Japan)

[ワシントン 17日 ロイター] - ドナルド・トランプ氏の一部の協力者の間で、司法省の独立性を低下させ、国家の最高法執行機関を保守派の「攻撃犬」に変えようとする提言をまとめる動きが進んでいる。ロイターは、この動きに関与する9人に取材した。

司法省が民主的制度を保護し法の支配を守る役割を担っていることを考えれば、こうした改革が成功すれば、2期目のトランプ政権による最も重大な行動の1つとなる可能性がある。また「独立性と中立性」を核心的な価値として掲げる司法省の理念からも極端に逸脱することになる。

トランプ氏は司法省により数十件の容疑で起訴されており、11月5日の大統領選に向けた選挙運動の中で、もし自分が勝利すれば司法省を刷新すると公約し、民主党のバイデン現大統領など自らの政敵を訴追するために活用すると宣言している。

ロイターが取材した9人の一部は、陣営内部でも検討中であるとして匿名を希望しているが、彼らによれば、この計画は実質的に2つの面で構成されているという。

1つは、ホワイトハウスからの賛否が分かれる指示に対して「ノー」を突き付ける可能性が低い、強固な保守派を大量に司法省に送り込むこと。もう1つは、重要な意思決定の権限がキャリア官僚ではなく政権に忠実な支持者に集中するように省内の構造を再編成することだ。

これらの関係者によれば、共和党員の多くは連邦捜査局(FBI)は共和党により厳しいと感じており、FBIの権限にも新たな制約を加え、その任務の多くを他の法執行機関に移すことになるという。

トランプ氏の盟友として有名で、議会侮辱罪で有罪判決を受けたスティーブ・バノン氏は、「司法省は制度面での問題を抱えているとトランプ氏は感じている」と語る。「人事の問題だけではない。省内の粛清は必要だが、制度的な改革も必要だ」

司法省の改革が実現すれば、トランプ政権としては、職場の多様性を推進することを意図した雇用プログラムの廃止や、人種差別的慣行が批判されている警察機関に対する連邦政府の監視の終了など、保守的な政策を推進しやすくなる。

ロイターがトランプ陣営に問い合わせたところ、陣営幹部のスージー・ワイルズ、クリス・ラシビータ両氏による12月の声明を参照するようにとの回答だった。

当該の声明には、「トランプ大統領または適切な権限を持つ陣営メンバーが直接発したメッセージを除き、将来の政権人事や政策発表のいかなる側面も公式のものと見なすべきではない」とある。

司法省を刷新するというトランプ氏の公約はさまざまなところで書かれてきたが、同氏の協力者やアドバイザーらが主張する措置を具体的に見極めようという関心は乏しい。

トランプ氏の協力者として有名な2人の人物はロイターの取材に対して、FBI法務顧問を廃止することを支持していると語った。トランプ氏の2017─2021年の大統領任期中、2016年の大統領選でロシア政府関係者と接触した疑いについての捜査の承認に一役買ったことで共和党の憤激を招いた役職だ。

法務顧問は、進行中のケースやその他の事項に関してFBI職員に法務アドバイスを提供する。このポストを廃止すれば、FBIとしては、指揮系統の中でトランプ氏が選んだ司法長官に近い筋からガイダンスを受けざるをえず、政治的な監視から独立した捜査を実施することが難しくなる。複数のトランプ氏の支持者とFBIの仕組みに詳しい法律専門家が語った。

<「普通の政治ではない」>

トランプ氏の協力者らは、行政府の長である大統領は、司法省に対して自らが適切と考える指揮・統制を行う広範な権限を持つべきだ、と主張する。

だが民主党の大半はもちろん、共和党の中にもこうした見解に否定的な声はある。つまり、司法省は党派にとらわれずに司法を執行する責任がある以上、非常に高いレベルの独立性が必要だという主張だ。司法省の任務には、大統領と親密な政界関係者に対する捜査が含まれるときもある。

司法省改革案を策定しているトランプ氏側近の多くは、第2次トランプ政権に向けて詳細なプランを作成している「プロジェクト2025」という複数の保守派シンクタンクによる協議会に名を連ねている。「プロジェクト2025」はロイターに対し、トランプ氏の選挙運動については何も言えないと述べている。

トランプ氏側近らは、第2次トランプ政権が誕生した時点で強硬な保守派を司法省に送り込むべく、新たな方法を探っている。内部に詳しい2人の人物が明らかにした。

こうした細部にわたる準備は、トランプ氏による混乱に満ちた2016年の政権移行とは対照的だ。複数の関係者は、当時は政策に関する計画がほとんど無きに等しかったと認めている。

トランプ氏は第1次政権の最初の数カ月間、司法長官とFBI長官との衝突に忙殺された。両者とも2016年のトランプ氏の選挙運動に対する捜査を中止させず、大統領の怒りを買っていた。

同氏に近い複数の関係者によれば、トランプ氏はこうした体験を繰り返すまいと決意しているという。

トランプ氏は現在、司法省による2件を含む4件の刑事訴訟を抱えている。容疑は合計88件で、2020年の選挙結果を覆そうと試みた件、退任後も機密書類を保持していた件、そしてポルノ俳優に対する口止め料支払いの隠蔽(いんぺい)に関するものだ。

77歳になるトランプ氏はすべての訴訟で不法行為を否認しており、こうした訴追は、司法省が自分に対する偏見を抱いている証拠だとしている。司法省はそうした偏見を否定し、捜査はすべて中立の立場で進めているとしている。

ガーランド米司法長官は16日、「司法省に対し、前例のない、率直に言って根拠のない攻撃が相次いでいる」と述べた。

超党派の司法制度の確立を約束する一方で、トランプ氏は多くの政敵を逮捕するよう求めてきた。昨年6月には、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、81歳のバイデン氏を「特別検察官」に調査させると表明した。

<FBIに対する支配>

協力者の中には、トランプ氏が口にする「リベンジ(仕返し)」を支持することを控える人もいる。だがそうした人々も、司法省・FBIに対するトランプ氏の支配を強めることには賛同する。

「膨大なリソースと強制力、意のままになる捜査手段を握った権力中枢があり、大統領以下に連なる指揮系統の統制からの独立性が前提とされていると、権力の乱用に直結する」と主張するのは、元司法省職員で、トランプ政権で運輸長官代理を短期間務めたことのあるスティーブ・ブラッドベリー氏。

ブラッドベリー氏と、トランプ政権下で司法省上級幹部の座にあったジーン・ハミルトン氏は、ロイターによるインタビューの中で、FBI法務顧問を廃止する措置に賛同している。

両氏は、トランプ氏を代弁する立場にないとしつつ、「プロジェクト2025」にアイデアを提供しているという。ハミルトン氏は、トランプ氏に最も近い政策顧問の1人であるスティーブン・ミラー氏の右腕的存在だ。ミラー氏にコメントを求めたが回答は得られなかった。

またブラッドベリー、ハミルトン両氏は、FBI長官が政治任用者である2人の司法次官補に直属するよう司法省の指揮系統を変更することを支持している。

FBI長官は現在、さらに高位の司法長官代理の指揮下にあるが、ブラッドベリー氏によれば、実際には司法長官代理はあまりにも多くの監督任務を抱えて多忙であり、FBIによる捜査を監督できないという。

またトランプ氏の盟友や顧問らは、司法省幹部が実質的な監督を行うにはFBIによる捜査対象が広すぎだとして、FBIが捜査可能な犯罪の種別を大幅に制限したいと考えている。

ブラッドベリー氏は昨年7月に発表したもののさほど関心を集めなかった公開の政策メモの中で、FBIと管轄範囲が重なる領域については、麻薬取締局(DEA)などFBI以外の法執行機関に捜査指揮権を委ねることも可能だと指摘した。

ブラッドベリー氏は、FBIに残す捜査対象領域を「(連邦レベルの対応が必要となる)大規模犯罪、国家安全保障上の脅威」のみに絞ることが可能だとの考えを示した。

<政策的な人事>

トランプ氏の協力者らは、司法省の構造改革と並んで重要なのは、トランプ氏の要求事項を遅延させる可能性の低い忠実な人材を同省に集めることだと主張している。

トランプ氏は、「スケジュールF」と呼ばれる大統領令の発動を公然と支持している。これが活用されれば、何千人もの連邦政府職員を同氏に忠実な保守派に入れ替えることが可能になる。

そうなれば、トランプ政権は現在では数百人にとどまっている司法省内の政治任用者の数を拡大できるようになる。ただし同氏の周辺でも、厳密にいくつのポストを新設できるか見解はまとまっていない。

また「プロジェクト2025」に参加するトランプ氏の協力者の一部は、「官庁人事交流法」を活用したいと考えている。この議論に詳しい複数の人物によれば、同法は、政府省庁が非営利機関の支援を得つつ外部の専門家を登用することを可能とする、曖昧な法令だという。

司法省職員の一部が加盟する労働組合「AFSCMEローカル2830」はロイターに宛てた声明で、「連邦法令を中立的に運用し米国憲法を擁護するのではなく、党派性の強い政策課題を推進するために、トランプ氏の関係者がポストを埋めていくことを危惧している」と述べている。

トランプ氏の支持者らは、適切な構造と人材があれば、トランプ氏にとって保守的な政策目標を追求しやすい体制が整う、と語る。同氏の協力者らは数十のアイデアを提示しているが、その多くは、連邦政府による公民権制限の手法に広い範囲で関わっている。

たとえばハミルトン氏は、企業が職場における有色人種の数を増やすことを意図したプログラムを導入することで白人を差別していないか、司法省が検証すべきだと主張している。

司法省がそうした検証を行う権限は、「人種」や「性別」に基づいて採用や報酬を決定することを禁じる1964年公民権法に求められるはずだ、とハミルトン氏は述べた。

またハミルトン氏は、裁判所の監視の下で行われる司法省と各地の警察署の間の和解、「同意判決」を大幅に制限することを求めている。現状、有色人種や身体・精神障害者に対する公民権侵害を阻止するために用いられているものだ。

保守派はこの「同意判決」について、犯罪と戦う各地の警察に干渉する連邦政府の高圧的な活動だと説明する。だが人権活動家は、そうした主張は、これまで何世紀にもわたって記録されてきた不平等を無視するものだとしている。

以前、司法省公民権局の職員として勤務していたジョージタウン大学のクリスティ・ロペス教授は、トランプ政権下の司法省は、警察の活動の説明責任に関する業務が減少していたと語った。

「トランプ氏がまた政権を取ったら、同じ路線をさらに強化する可能性は否定できない」

(翻訳:エァクレーレン)

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Washington-based correspondent covering campaigns and Congress. Previously posted in Rio de Janeiro, Sao Paulo and Santiago, Chile, and has reported extensively throughout Latin America. Co-winner of the 2021 Reuters Journalist of the Year Award in the business coverage category for a series on corruption and fraud in the oil industry. He was born in Massachusetts and graduated from Harvard College.

Sarah N. Lynch is the lead reporter for Reuters covering the U.S. Justice Department out of Washington, D.C. During her time on the beat, she has covered everything from the Mueller report and the use of federal agents to quell protesters in the wake of George Floyd’s murder, to the rampant spread of COVID-19 in prisons and the department's prosecutions following the Jan. 6 attack on the U.S. Capitol.

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