いま、ヤマザキショップが注目されている。コンビニ型の店舗でありながら、高額なロイヤリティは必要なく、月3万円さえ払えば流通網など大手のシステムやノウハウが享受できる。
さらに営業時間もある程度決められるし、定休日を取ったり、独自の仕入れ先を持って特色のある商品を置くこともやりやすい。
そんな中、ヤマザキショップを追い続ける小川宗氏の話によると、新潟県村上市に「肉のとおやま」というお店があり、いちコンビニの域を超えるほどに充実したフードメニューが並んでいるという。
まず「肉のとおやま」というコンビニらしくない名前から、いや応なしに期待が高まる中、高速バスに揺られて新潟へ。そして羽越本線・村上駅から15分ほど歩いたところにそのお店はあった。
確かにあのYショップことヤマザキショップだ。しかしそれより大きな文字で「肉のとおやま」と、書かれている。ここは明らかにただのコンビニではない気がするぞ。
コンビニの中にお肉屋さんがある?
中に入る。いたって普通に見えるが、奥に何やらコンビニでは見慣れない一角がある。
(写真提供:肉のとおやま)
近づいてよく見てみると……お肉屋さんじゃないか。そう、ここではコンビニの中にど直球の肉屋があり、実際にお肉が買えるのだ。
いったいなぜこんな謎のレイアウトになったのか? 肉のとおやま店主の遠山敏夫さんにお話を伺った。
▲貫禄のある遠山さん
遠山さん(以下、敬称略):もともと私のおじいちゃんが昭和の前半ぐらいにお肉屋さんを始めて、それを1996年にヤマザキショップにしたんです。
──なぜYショップに?
遠山:お肉屋さんって、主婦の方とか以外はなんか入りづらいですから。
──確かに僕も少し身構えるかもしれません。
遠山:でもコンビニっぽく作れば気軽に入れるし。あとヤマザキショップは、だいたいなんでも自由にやらせてもらえますからね。
ワンコイン級村上牛弁当
──まずこのお店って「村上牛」押しですよね。お肉の特徴はなんですか?
遠山:脂の融点が低くて脂がとけやすいんで、脂っこさをあんまり感じづらいんです。「さし※」がいっぱい入っている割には、さっぱりしているし、結構柔らかいですね。※赤身の中に網の目のように入った脂肪のこと
▲コンビニ商品なのに、まさかの12,000円
▲A-4・B-4以上の等級に当たる高級肉
遠山:村上牛もふつうにグラムで売ると結構な金額になるけど、こま肉をお弁当にすれば気軽に買えますから。この「村上牛カルビーあみ焼き丼」で(ほぼ)ワンコインです。
──これで……すごい。
▲村上牛カルビーあみ焼き丼(税込551円)
遠山:ガスの直火で焼いているこの商品はウチの一番人気です。ちょっと食べてみてください。
──色合いがいいですね……焼肉のタレの味がきいていますし、ガッシリ肉をかむ充実感もあって。脂のコクも感じられて実にウマいです。
遠山:カレーにも村上牛の肉が入っているよ。
──すごい、ゴロッとデカいのが1個入ってる! このジャガイモの大きさもまたいいですね。
▲村上牛カレー(税込551円)
▲村上牛サイコロステーキ丼(税込551円)
遠山:あとこれがサーロインステーキの端っこで作った丼で、運が良かったらおいてあります。
──村上牛サーロインのサイコロステーキ丼が551円なのか……!
▲村上牛牛丼(税込551円)
遠山:もう赤字スレスレでやってます。
──ますますありがたみが増しますね。カップラーメンとか単体のお肉とか、ほかの商品もついでに買ってくれないとつぶれちゃいます。
遠山:お客さん、ほかの商品も買ってくださいね(笑)。
最強? ステーキ重弁当
遠山:実は、ほとんど儲からないお弁当のほうが大量に注文が入ります。団体さんが観光バスで来て、「村上牛網焼きステーキ弁当」っていう1,600円以上の一番高い弁当を50個とか買っていく。
▲村上牛網焼きステーキ弁当(税込1,631円)
──その値段でも儲からないんですか?
遠山:一番儲けが出ない。だってお肉はこのぐらいの値段がするんですよ。
──すごいな……12,375円。等級の高い黒毛和牛ですもんね。
遠山:ステーキ弁当はこの半分近くを使うんだけど、苦しいですよ。
──……そりゃ儲けなんか出ないですよね。
──……といいますか、全然儲からない村上牛弁当をいったいなぜ出そうと思ったんですか?
遠山:勝手な村上牛のコマーシャルです。食べてもらえば分かるんですがホントに村上牛をいっぱい使っていて、これで利益を上げることは考えていないんですよ。
──本当に村上牛をもっと知ってもらいたいんですね。
遠山:そのためだけに、このお弁当を出しているので。
──地元愛!
遠山:あと、お弁当で村上牛とかのお肉を気に入ってくれた人たちが、利益率の高い単体のお肉を買ってくれるんですよ。
──いい宣伝効果もあるんですね。
1日1000個売れる、118円弁当
遠山:ウチには毎週火曜日に出す「100円弁当」もあります。118円(税込)まで値上げしましたがいまだに人気で、1日で900~1000個は出ます。
──この郊外でそれはすごい……
遠山:行列ができて、車が入りきれなくなります。
──どれぐらいの種類がありますか。
遠山:60種ぐらいですかね。カレーやチャーハン、カツ丼もあります。
──丼ものをこの値段で実現するとは……!
▲豚キムチ丼(税込118円)
遠山:おにぎりがあの値段で売れるんであれば、弁当もこの値段にできるんじゃないのって言って作ったのが100円弁当なんですよ。だからおにぎり感覚で買ってもらってね。
──その発想が常軌を逸していますね。僕らとしてはありがたいですけれども。
▲三色丼(税込118円)
コロッケとメンチにも村上牛がぎっしり
遠山:ちなみにウチは村上牛のこま肉を使ったコロッケも有名で、これもYショップにした1996年ごろにはじめたんですよ。毎日ではないですが、土日など食材が集まったときは置いています。
▲村上牛コロッケ(税込130円)
──揚げたてでおいしい。いい感じに味がついていて、何もかけなくても食べられますね。
遠山:ありがとうございます。
──中にはゴロゴロとサイコロ型のお肉が入ってます。このコロッケ自体が大きいし、130円なら絶対に安いです。
遠山:そうなんです、あんまり作っても採算が取れないので、1日あたり30個ぐらいが限界ですね。ちなみにここ2、3年でメンチカツもはじめました。こちらは200円で100%村上牛を使っていて、コロッケよりも人気ですよ。
──今日食べられないのが残念ですが、相当安いですね。
遠山:ちなみに村上牛のひき肉は100グラム300円で売っているんですけど、それより安いんでほぼ原価に近い値段です。
コンビニなのに「持ち帰りラーメン」を出す
▲ラーメン(並・530円/大盛・570円)[写真提供:肉のとおやま]
──あと、ラーメンを出すのも面白いですね。
遠山:村上に理想のラーメンを出すお店がないので、自分で作りました。毎週月曜日に1時間だけ出しています。できあがったラーメンと、帰って家で作る用のラーメンセットの2種類から選べるんですよ。
▲持ち帰り用のラーメンセット(530円)[写真提供:肉のとおやま]
──たった1時間?
遠山:月曜日の11時30分~12時30分までの間なんです。それ以上売るとほかのラーメン屋さんに迷惑かけるし、半分趣味的なものですから。
▲ラー油のねぎラーメン(並・530円/大盛・570円)[写真提供:肉のとおやま]
──何か王者の余裕を感じますね。ラーメンは何種類ありますか?
遠山:豚骨ラーメン・卵ラーメン・カレーラーメン・ラー油のねぎラーメンなど6種類があります。
──まさかの6種類。そんなにたくさんあるのはなぜですか?
遠山:いろいろあると飽きないしね。
──ちなみに1時間だけでどれだけ売れますか?
遠山:50~60食とか、それぐらい。
──1分1食ペースですね、売れているなぁ。ここイートインはないですけど、皆さんどこで食べるんですか?
遠山:この辺は市役所とか税務署があるので、職場で食べる方が多いですね。
遠山:ちなみにこれが、『ハウルの動く城』に出てくるベーコンエッグをイメージしたメニュー。どうにか作れないかと思って各社のベーコンをあれこれ食べてみて、一番おいしいものでお弁当にしたんですよ。
──なんでもやるなぁ。でも単なるアイディア一発じゃなくて、考えられているんですね。
ヤマザキショップの本部からは「何も言われない」
──本当に変わったコンビニですけど、やっぱりお客さんから驚かれますか。
遠山:そう、コンビニにお肉屋さんがあるのは珍しいからね。
──そうですね。ほかは雑誌とかコンビニらしい品ぞろえですし。
遠山:1日で大体200人ぐらいのお客様に入っていただけるんですよ。普通のお肉屋さんは200人なんて入らないですからね。
──学生や男性でも気軽に入れますもんね。
遠山:そうそう。
──ヤマザキショップの本部も基本的には何も言わない?
遠山:ほとんど言われませんね。24時間営業しなくてもOKでここも7~19時までですし、月に3万円を払って、ちょっとヤマザキの商品を扱えばOKですから。
──それがすごいですよね。
遠山:決まりも少ないし、だから個性的な店づくりができるんだよね。
──やっぱりヤマザキショップにしたのは、こんな風に自由にやれるからですか?
遠山:そう、いろんなことができるんで。いまコンビニの労働時間が問題になってるけども、定休日も臨時休業もヤマザキショップは自分で決められるんですよ。
このお店は「究極の趣味」
──これからお店でしたいことはありますか?
遠山:うん。いまはお弁当屋さんを出したくて、あと景気が良ければトラックの運転手さんたち向けにおにぎり屋さんもやりたいです。
──ドライバーさんたちのスタミナ源になりますね。
遠山:うん。長距離運転の人たちって、やっぱあったかいものが食べたいって言うんですよね、だから豚汁と一緒にね。
──おにぎりと豚汁は黄金コンビですからね。
遠山:いま農業をやめたおばあちゃんとかおじいちゃんたちが、仕事がなくてぷらぷらしていることが多いんですよ。そういう人たちにおにぎりを握って貰えないかなって。近くに朝日地区っていう米の生産地もあるし、国道沿いにお店を作れないかと考えています。
──やっぱり地域のことも考えてるんだなあ。
▲おじいちゃんおばあちゃんたち向けに置くくだもの
──最後に、このお店は遠山さんにとって何ですか。
遠山:「趣味」だと思います。会社員と違うので、自分が追及した一番大事な趣味みたいなものが結局仕事として残ると思うんですよね。自分からやってるんで、辞めたいと思えばいまでもすぐ辞められるんだよ。でも、やりたいからやってるんだって。
──「趣味」だからこそ。
遠山:そうです。もう究極の趣味でしょうね。自分の人生をかけた趣味なんだと思うんですよ。だからやりたいことをやればいいし、やれるんだったら何でもやりたいって思うんですよね!
お店情報
肉のとおやま
住所:新潟県村上市上町2-18
電話:0254-52-2207
営業時間:7:00~19:00
定休日:年中無休
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February 04, 2020 at 08:30AM
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