世界の安定を語るのであれば、その実現に向けて具体的に行動しなければならない。
ロシアのプーチン大統領が通算5期目の初外遊として中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。
強調されたのは両国の結束だ。習氏は「中露関係の発展は世界の平和と安定、繁栄に資する」と述べ、プーチン氏も「協力を拡大し、より公正で合理的な国際秩序を構築したい」と表明した。
会談後に発表された共同声明は、合同軍事演習の規模拡大や貿易・投資の促進、金融や人工知能(AI)、宇宙といった分野での連携強化などを打ち出した。
両国を結びつけるのは、米国への対抗姿勢だ。中国は米主導による包囲網形成を警戒し、ウクライナに侵攻したロシアは制裁を科されている。中露主導のBRICSや上海協力機構を通じ、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国を取り込む思惑も一致する。
ウクライナ戦争で中露関係は様変わりした。2023年の貿易総額は前年比26・3%増の2401億ドル(約37兆円)と過去最高を更新した。中国はロシアから原油や天然ガスを大量に購入することで間接的に戦費を支える一方、電子部品をはじめ軍事転用可能な物資をロシアに輸出している。
戦争の長期化でロシアにとって中国は頼らざるを得ない存在となっている。習氏は「ウクライナ危機の政治的解決が正しい方向」と説明する。中国は現在の力関係を生かしてロシアに影響力を行使できるはずだ。
米欧はウクライナ支援を継続しているが、侵攻開始から2年以上が過ぎ、各国の世論には「支援疲れ」も出ている。
来月にはウクライナが提唱する和平案について話し合う首脳級の国際会議がスイスで開催される。ロシアは招待されておらず、中国も距離を置いている。
だが、他国の領土を踏みにじる国際法違反から目を背け、関係の緊密化を図るだけでは国際社会の信頼は得られまい。
習氏は「欧州の平和と安定が早期に回復することを期待し、建設的な役割を果たしたい」と語った。そうであるならば、ロシアに対して軍の撤退と停戦の働きかけを強めるべきだ。
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