さらに,この発売に合わせてアップデートも行われる。発売からずいぶん経ってのアップデートだが,本作を遊びつくしたプレイヤーにも,初心者にも嬉しい内容だ。これはもう,誰であっても「SEKIROを遊ぶなら今!」と言えよう。
SEKIROというと,「むちゃくちゃ難しいゲーム」という印象を持っている人も多いかと思う。実際,発売後はそうした話題が盛り上がり,「難度選択がほしい」なんてプレイヤーの声もあった。フロム・ソフトウェアが手掛けた“死にゲー”経験者であっても,容赦なく死にまくるゲームであることも事実だ。
しかし,ゲームシステムに慣れてくると,「『DARK SOULS』より簡単かも?」と思えるようになる。そして,戦闘システムの完成度の高さから「死ぬけど面白い!」に評価が変わってくるという,噛めば噛むほど味のあるタイトルだと思う。
本稿では,まだSEKIROを触っていない人に向けて,その戦闘の魅力をお伝えしつつ,先行プレイしたアップデートの内容を紹介していこう。
手に汗握る剣戟の死闘感が楽しい
細かなシステムについてはSEKIRO発売時のレビュー記事を見てもらいたいが,本作は「刃と刃がぶつかり合う剣戟」にフォーカスした戦闘が特徴のアクションゲームだ。「DARK SOULS」シリーズのようなヒット&アウェイではなく,接近戦で斬り合い続けるのが基本となる。
重要なのは自分も敵も持っている「体幹」ゲージだ。これは体力とは別のもので,攻撃を受けたり,ガードしたりすると溜まっていく。そして,自分の体幹ゲージがいっぱいになると,隙だらけの危険な状態になり,敵の体幹ゲージをいっぱいにすると,こちらが即死攻撃の「忍殺」を発動できるようになる。
つまり,ガードを続けるだけではいずれ体幹が溜まって倒されてしまうのだが,敵の攻撃が当たるときにタイミングよくガードボタンを押すと「弾き」が発生し,逆に相手の体幹にダメージを与えられる。攻めるときは攻め,守るときは守り,守るにしても相手の攻撃をよく見る……そうした攻防の妙が味わえる戦闘システムが採用されているのである。
見た目にはガキンガキンと激しい攻撃の応酬が展開されるので,非常に難しそうな印象を受けるが,実は操作はシンプルだ。ガードボタンを押しっぱなしにすれば連続攻撃も防いでくれるうえに,仮にタイミングを計り損ねて弾きに失敗しても,通常のガードになるだけなのでリスクも小さい。弾きのタイミングも,シビアなものではない。
仕組みに慣れるまでのハードルが高いのは筆者も否定はしないが,見た目よりは取っつきやすい。
刃と刃が火花を散らしてぶつかる派手さや,相手の隙を探り合うジリジリとした駆け引き,手に汗握る緊張感といった要素が絡み合い,本作の死闘を演出する。この戦闘がとにかく楽しいゲームであり,本作が世界的に高い評価を得ているのも,触ってみれば頷けるだろう。
「死ぬけど,攻略法はある」と感じられるバランス
「SEKIROは難しいゲームなのか」と聞かれたら,筆者は迷わず「難しい」と答える。困難を乗り切った達成感が気持ちのいいゲームであり,“死にゲー”の最大の魅力はそこに詰まっているのだから,こればかりは仕方がない。
一方で,「でも,DARK SOULSより簡単だよ」とも主張したい。なぜかというと,本作では「ボスに対して(探索での見落としがない限り)必ず有効な対抗手段を持っている」からだ。
「DARK SOULS」シリーズなどの場合,RPGとしてのステータス育成要素があるため,強敵に対して有効な武器や魔法が使えるかは,プレイヤーごとに異なる。キャラクタービルドによっては,強い敵はどうしようもなく強い。
一方でSEKIROの場合,キャラクタービルドがなく,強敵のために準備しておける忍具やアイテムも決まっているため,自分の手持ちをよく見ると,有効なものがきちんと用意されているのだ。
本作のボス戦は「持てるすべてを使って挑め」というスタイルである。試行錯誤していくと,何かしら相手の弱点が見つかるはず。「あ,これ効くじゃん」と分かった途端,一気に攻略が楽になることも多い。挑戦を続けていくうちに,「死ぬけど,攻略法はちゃんとある」と手応えが感じられる絶妙なバランスだ。
だからこそ,酷い目にあっても「もう1回!」と挑んでしまう。そして撃破したときの達成感を味わいたくなる。そんな中毒性を持っているのが,SEKIROのボス戦だ。
初心者の攻略に心強いリプレイ機能が登場
10月29日のアップデートでは,SEKIROに初めて触る人にとって非常に有益な新機能「残影」が実装される。これは,メッセージと共に最大30秒のリプレイを録画し,オンラインで共有できるというものだ。共有された残影は,マップ上に目印が配置され,それを調べると再生できる。
「DARK SOULS」シリーズや「Bloodborne」では,非同期のオンライン要素として,ほかのプレイヤーの残したメッセージや,死にざまのリプレイが共有されたが,残影はより具体的なプレイ内容を残せるようになった機能と考えていい。なにせ30秒も録画できるので,進行ルートのお手本や,隠されたアイテムの取り方といった攻略のヒントを,分かりやすく残せるのだ。
もちろん,自分の力で切り開きたいのであれば使わなくても問題ないが,攻略方法に困ったときに残影を確認すれば詰みづらくなる。遊びこんでいるベテランは,初心者のためにぜひ残影を残してあげよう。
ヤバイボス達がアップデートでさらにヤバくなる!
既存プレイヤーにとって,アップデートの目玉となるのがボスとの再戦・連戦機能だ。どちらも鬼仏から選べる機能で,再戦は一度倒したボスを選んで戦えるというもの,連戦はいくつかのルートに分かれており,各ルートごとに定められた複数のボスと連続で戦っていくというものだ。
連戦では,ボスを撃破するたびに回復瓢箪と回生の力の補充,形代の購入が行えるが,もし敗れてしまうと,最初のボスからやり直しとなってしまう。
再戦・連戦のどちらも,使用したアイテムはクリア後,もしくは死亡後に返却されるので,全力で挑める。本編の進行状況に関わらず攻め力は固定だが,身体力や所持忍具は本編と同じ。つまり,本編では入手時期的に使えなかった忍具を用いてボスに挑むなんてこともできる。
などと説明すると,歴戦の「狼」であれば「ボス倒すごとに回復できるなら余裕じゃん,全員忍殺してやるからかかってこいや」と思うかもしれない。しかし,それは甘い。甘すぎる。フロム・ソフトウェアはそんな甘い考えの忍びを許してはくれない。
なにせ,各ルートの最後に待ち構えているのは,既存ボスのパワーアップバージョンなのである。
例えばあるルートでは,本編序盤に登場するボス2体を撃破した後,本城を舞台に葦名弦一郎と戦う。おそらく,大半のプレイヤーは彼との戦いで大いに苦戦した思い出があると思うが,再戦するだけなら問題なく倒せることだろう。しかし,連戦で登場するのはただの弦一郎ではなく,「心中の弦一郎」なのだ。
具体的には,新モーションを引っ提げて襲い掛かってくる。このモーションがどのぐらいヤバイかは,実際にプレイして悲鳴を上げてほしいので筆者は何も言わないが,まぁ,死ぬよ。
連戦の最終ルートとして待ち受けるのは「何の見返りもないけど,強化版も含めてボス全員をぶっ倒してね」という,あまりに慈悲のないエンドコンテンツだ。これをクリアできれば,「SEKIROを遊びつくした」と豪語できるだろう。
初心者が始めるのにもってこいなだけでなく,ベテランにとっても楽しいアップデートなので,ぜひ10月29日からは誰もかれも死にまくってほしい。
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